歴史を忘れない日系人ミネタのこと.
NHKで「渡辺 謙 アメリカを行く “9.11テロ”に立ち向かった日系人」という番組をやっていた.
同時多発テロ以後に“アラブ人”に対する検査を厳しくしようとする風潮の中,当時の運輸長官であるノーマン・ミネタはそれに反対し,旅客は一律にスクリーニングすべきであると主張した.なぜそうしたかというと,大戦中,自分たち日系人が「日系人であるというだけで」強制的に収容所に入れられたことを憶えていたから.日系人たちは自分たちと同じ悲劇を繰り返させまいと声を上げ,そうした努力はついに,連邦政府による運輸保安組織—TSAとして結実したという話.
なんとなくググってみたら,「こんなことしてません?」さんというブログが,素敵な感想を書かれていた.確かに,感傷や懐古に溢れる「終戦記念」番組ばかりの中で,明日に繋がる終戦特番だった点で,久々の秀逸な作品じゃないかと思う.
ともかくにも,あの面倒くさいTSAロックや,あるいは空港で香水を没収された経験も(←私ではなく,母です),こうした苦慮と努力の末の結論だったのなら,納得がいくというものだろう.
でも一方で,現実的には,人は自分と違う存在を受け入れられないというのも事実だ.例えばイギリスでは,黒人の方が圧倒的に職務質問される頻度が高く,そうした不満の鬱積が夏の暴動につながった.イラクでも結局,米軍が去った直後にスンニ派とシーア派の対立が顕在化している.こうして偉そうにブログを書いている私だって,街中やバイト先に中国人や黒人が来れば,無意識に不信感を抱いて身構えてしまう.
それは人間という生き物である以上,仕方のないことかもしれない.でもヒトには記憶と理性がある…あとはそれをどこまで使えるか.自分の肖像画に,収容所とそこで暮らした自分たち家族を描かせたミネタ氏の姿が,そのことを何よりも雄弁に語っていたと思う…本当に素晴らしい人だ.
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