『沖縄 島言葉の楽園』を観たメモ

NHKのETV特集『沖縄 島言葉の楽園』を見た。沖縄を訪れて以来、その文化の独自性や多様性のとりこになっていて、特に言葉の多様性には(親が言語学的なことをやったのもあって)とても惹きつけられるものを感じたので、面白く見た。しかし同時に、ちょっと引っかかっているところがあったので、今日はそこを走り書きしてみる(きちんと勉強したわけではないのでご了承ください)。

引っかかったところを一言で言うなら、このごろ世界的に盛り上がっているナショナリズム的なところ。つまりは自分の言葉や文化を自分が大切にするということと、「われわれ」の言葉や文化を大切にしようということは違うということ。両者の間には飛躍があるのに、そこを直結させようとする演出がなんとなく気持ち悪かったということだ。例えば番組の例を挙げるなら、一言で「ウチナーグチ」といっても、比嘉さんが話されていた首里のお膝元の「うちなーぐち」と新城さんの話す市場の「うちなーぐち」では違いがある。番組の前半ではそうした多様性ということに焦点が当てられていたはずなのに、後半になると突然、「われわれ」の「ウチナーグチ」としてひとくくりになって、自治やら教育やらの方向に議論が進んでいっている印象を受ける。考えすぎかもしれないけれど、なにか恣意性がないか。

例えば、沖縄語(「ウチナーグチ」)と国頭語は確かにそれぞれのグループを形成しているのだろうけれど、番組で焦点が当てられていた奥の集落のように、実際には街々でも微妙な違いがあって、全体としては緩やかなスペクトラムを形成しているように思われる。もっとマクロな視点で言えば、番組では(権威ある)ユネスコが沖縄語は独立した言語だと認めたことを強調していたけれど、それは決して他言語と無関係ということではなくて、実際には(発音・語彙・文法などの点で)日本語・中国語・南方諸語など東アジア全体の他言語との緩やかなスペクトラムの中に位置づけられるはずだ。それにもかかわらず(「分類する」「分ける」ことが学問の基礎だとはいえ)違うものが一括りにされ、さらに自治や教育や民族性といったこととつなげて議論されはじめると、私はどうしてもナショナリズムというか、そこに「主義」があることを警戒してしまう。番組内ではそこまで露骨じゃなかったけれど、それでも「われわれ」の文化を大切にしていこう!というメッセージ性の強い後半は、単なる事実の記述ではなくイデオロギーを感じる(まぁ、逆に何も主張がなかったら番組にならないとも思うのだけど)。

少し話は変わるけれど、一時期「ヒガンバナに見る「和食」の貧しさ-伝統の捏造-」という記事が話題になった。あれはあれで極論なのかもしれないけれど、例えば「日本の歴史」とか「日本文化」とカテゴライズしたとき、皆がみんな同じものを共有していたと思うのは大きな勘違いだと思う。それは「江戸文化」「下町文化」「長屋文化」といくら再分化したところで変わるものではない。同じ長屋に暮らしていても、田舎からきた出稼ぎと生粋の江戸っ子では、生活の多くの点が共通していながら、また多くの点に違いがあったはずだ。

話を戻すと(もう自分でも何を言ってるのか分からなくなりつつあるけど)、確かに文化・伝統を継承して行こうという思いと行為は大切で、特に今回取り上げられたように喪失の危機に晒されている琉球などの諸言語・文化においては、教育や自治を通じて積極的に再評価・再普及を図ることが重要だと思う。けれど、自分の文化・伝統はあくまで自分の暮らした土地・社会・家庭だけの特殊性を持つものだという意識も同時に持つべきでは、と思う。自分が家庭で使っている言葉が祖父母の言葉、あるいは隣人の使う言葉とは異なり、共有の文化を伝承しているつもりが極めてローカルな文化で相手の文化を上書きしている可能性もあるのだということを常に意識する必要があるんじゃないかな。

私が個人的に出身校のカラーとか県民性として他の人と一括りに議論されるのが嫌いだからなんだろうけれど、こういう伝統とか言語とか文化とかは自分のアイデンティティとして持っていて、たまに人と違うところに気づいたらお互いに対照しあって「こう違うんだー面白いねー」くらいに思う程度でいいんじゃないだろうか。

余談だけど、番組の最後で引用としてイングランドとスコットランドの話が出ていたけれど、これだってどちらもひとくくりの社会ではないしね。例えばイングランドについては、特にサッチャー政権後は北部の炭鉱地域とロンドン近郊で経済・文化的温度差が広がっているし。「イギリス」と言わずに「イングランド」「スコットランド」をそれぞれひとつの「国」として取り上げているとき、そのまとめ方に恣意性があることは意識する必要があるんだろうな、と思うわけです(なぜ「イギリス」という大きな単位で議論しないのか、逆になぜ「エセックス」「ミッドランド」といった小さな単位で議論しないのか)。

Comments Closed

BSL(ポリクリ)でポケットに入れておくもの

Evernoteを整理していたら、『たまごの日記』さんというブログの「医学生のポケットの中身と聴診器の行方」という記事のクリップを見つけて、あー何を持ち歩くかいろいろ悩んでたんだなぁ(というか未だに悩んでる…)と思い出した。改めてみんな何を持ち歩いてるのかな?と思い「白衣 ポケット 中身」でググると…出るわ出るわ(笑)。でも大体みんな同じようなところに落ち着いてるのね。

BSLが終わったいま、ある程度ポケットの中身も落ち着いていて、たぶん研修医になってもこのままの状態を維持すると思うので振り返っておく。

Read More »

Comments Closed

Schedule: going Google or stayin’ planner?

スケジュール管理をデジタルに移行するか、アナログに留まるか…悩ましい問題なのだけど、今日いろいろ試してみて、自分なりのケジメをつけたので書いておく。

まず現状だけど、ここ数年はA5版のダイアリーを使っていた。見開きの片面がイラストで、もう片面が1週間のスケジュールというもので、個人的にそのイラストが好きで使っていた(イギリスのものなので異国情緒があって、なおかつ季節感のあるイラストが気に入っていた)。また、手書きにこだわっていた理由として(手帳を落とさない限りは)データが損壊・消失するリスクや電池切れの心配がいらないという頑健さ、開けばその場ですぐ書き込めるスピード感があった。さらに言えば(手書き派にありがちな理由として)読書さえiPadに移行しつつある現状、スケジュール管理くらいは自分の手で書いて主体的な感覚を保ちたかったという思いもあった。

それなのに悩み始めたきっかけは、やっぱり出先でスケジュール調整できずに困ることが増えたこと。実家に行ったら法事の予定が話に上がり、オフに友達と出かけたらふと旅行に誘われる…そんなとき、A5のダイアリーを持ち歩いていることなんて、ほぼ、ない。結局、その場でスケジュール調整ができずに歯痒い思いをすることが多かった(大して重要じゃない予定は帰ってから調整すればいいだけの話ではあるけれど、たいていそんな予定は、帰ったときには忘れている)。そんなわけで、ダイアリーを持ち歩いているとは限らなくてもiPhoneならまず持ち歩いているし、万が一電池が切れてもGoogleカレンダーとの同期は済んでいるので、iPadや、さらにはネットさえ使えればどこでもブラウザで確認できるデジタル管理のほうがいいのではないかと思い始めた。

他の人の意見を求めてウェブを見ると、デジタル派、アナログ派、アナ→デジ派、デジ→アナ派、両刀使い(笑)など玉石混交あって、結局どれがいいのか分からないので、試しにさっき移行を試みてみた…で、結論としてはやっぱりどちらも一長一短あるので、両方使おうかなと思っている。デジタルは確かに便利なのだけれど、スケジュール入力が意外とtime consumingなのと、時間がfixされていない「空いた時間にやろー」という予定の入力が浮いてしまうところが気になる。特に気に入らないのは、いろいろな予定が並列的に表示されてしまって、アナログでは下線や枠囲みで簡単に区別できていた重要な予定とそうでないものがごちゃごちゃになってしまうところ。GoogleカレンダーをFacebookとも同期している場合、誘われたイベントで「時間があったら行こう」程度のものと、自分が運営に関わっていて絶対に欠席できないようなものとが、同列に表示されてしまうところが非常に気持ち悪い。

ただ一方で、そういった重要なイベントについてはアラームでリマインドをかけられるというのがデジタルの強み。そこで私の場合、デジタルは重要度の優劣関係なくFacebookの誘いやら誕生日やらイベントやらのジャンクをごちゃごちゃ集めておく場所にして、そこから1週間単位、1日単位で自分に意味のある予定をダイアリーへと同期することにした。つまり、日々のスケジューリングは今までどおり手帳で、ダブルブッキングの許されない予定のみデジタルでも確認できるようにしておく。これは文字通り「マニュアル」での同期作業を怠ると破綻するリスクがあるけれど、現状そこまで忙しい日々は送っていないので、しばらくはこれで行くことがきるのではないかと。あとは、来年就職してGoogleカレンダーでのスケジュール共有とかが要求されるようになったら、またその時に考えることにしようと思います。

Comments Closed

Re:tweet 1394. 実習終わり

自分のためのTwitter振り返り。

7月から13ヶ月にわたって続いてきた臨床実習、またの名をBSL、もしくはポリクリ…今週でやっと終わった。来週は診察についての実技試験があって、再来週からは卒業試験がはじまる。いよいよ学生生活のclosingにかかってきたなーというか、ちょっと腹を括る時期が来たなという感じがする。

忙しい忙しいといいながら、なんだかんだiOS 8リリースに浮かれてずっとiPadいじってたり、航空管制ゲームで那覇空港いいわぁ…と蕩けてたりしているけど、そろそろ意識を変えないといけないね。

以下Twitterログ。

Read More »

Comments Closed

病院訪問11: 法人立病院(南関東)

めっちゃ忙しいという病院を見学してきた。確かに、めっちゃ忙しそうだった(笑)。

当初の研修医のレベルは凄く高いというほどではないが、逆に2年目以降ぐいぐい伸びているのが非常によく分かる。上級医が丁寧に監督しているのが好印象。

Read More »

Comments Closed