コーニッシュ・リヴィエラ

これがイギリス滞在、最後の遠出。夜行列車「ナイト・リヴィエラ・スリーパー」で、ちょっくらペンザンスまで。

終点まで行くので、乗り過ごす心配もなく安心して寝られる…と思っていたのだけど、ロンドン・パディントンを23.45発、ペンザンスに7.53着ということで、ゆったり過ごすにはちょっと厳しい。朝ご飯、7時って言ってたのに7時前に来たし、実際寝られたのは6時間半くらいじゃないか?さらに「カレドニアン・スリーパー」と違って、到着後はすぐ降りてくださいとのことで、これまた厳しい…

ペンザンスは(早朝だったこともあるけれど)思った以上に何もない、静かな港町。そこから50分ほどバス(1/1A系統)に揺られると、ランズ・エンドに着く。イギリス最西端っていうところだけど、まぁこちらも何もない。まともな標識すらないので、実際どこが最西端の場所なのかよく分からない(さっき地図で確認したら”the First and Last Refreshment House”っていう休憩所の前らしいのだけど、”Lands End”っていう新しくできたテーマパークが手前にあるので、みんなこの辺しかうろついていなかったように思う)

バスの本数が毎時一本未満なので、ここで2時間潰れて、駅に戻ったのは午後1時半。近くにセント・アイブスなどなど、いくつか景勝地もあるのだけど、庭とか自然とか冬にこれ以上見ても仕方ないだろうと…それに、いかんせん凍えそうな天気なので(それでも風は穏やかな日だったらしいけど)諦めて、ぶらぶらロンドンに戻ることに。これがまた旅情を楽しむには厳しかったっていう…

座席に指定券の表示がないから、どこが予約されている席なのか分からず、常に席を追い出される不安感(実際、一度追い出された)。IC125は遅い、揺れる、しかも途中でいきなり車内灯が消える。なんとか窓際を確保したものの、景勝区間(コーニッシュ・リヴィエラ)として知られるダーリッシュ Dawlish 〜エクセター Exeter 間も、冬の荒れ模様ということで、鉛色の空と茶色の海…なんだこれ。

暗くなっちゃったけど、バースにも立ち寄って帰ってきた(何も見られなかったけど)。ダメだ、冬は日照も短いし、寒いし、何もかもが閉まっている…イギリスを旅行するなら、やっぱり夏なんだ。

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研究を振り返る

2時からキッチンで教授を交えてディスカッション、ということでドギマギしつつ部屋に向かったら…ティーパーティのセッティングがされていた。私のお別れ会ということで、サプライズだったらしい。嬉しいけれど…なんか気持ちの晴れない日が続いているせいもあって、あまり盛り上がれなかった。申し訳ない。

でも、もうすぐ研究室生活も終わりなんだと思うと、少し寂しい気分になる。まだ何日か残っているけれど、ここらでイギリスのラボで4ヶ月間過ごした感想をまとめてみようと思う。

所属していたのは、筋骨格系の研究室が数年前に1フロアにまとめられたという、比較的新しい研究室。事務員もセミナーも共有しているけれど、研究自体はいくつかの研究グループに分かれてやっていて、互いの研究テーマがゆる〜くつながっているような感じ。扱っているテーマは関節のモデリングだったり骨の微細構造だったりと、まぁいろいろあって、その中で私のリサーチチームはスポーツとリハビリのバイオメカニクスがテーマだった。

いろんなバックグラウンドの人がいたけれど、もともと理学療法士から出発している人が多かったかな。より外科的なテーマのグループには医師も多かった。病院に隣接していて、病棟勤務と掛け持ちで研究をしている人なんかもいて、だから結構みんなモチベーションが高い。日本に比べたら短いかもしれないけれど、それでも9時6時で働いているのはイギリスでは真面目なほうだ(そしてそこに11時頃のんびり現れる私…行きづらい!生きづらい!!)

いろんな国から、いろんな人が来ては去っていった。例えば、お昼ご飯をいつも一緒に食べていたポスドクの人は、ギリシャ出身のプログラマーだった(データ処理や3D画像構築にプログラマーの力が不可欠なのです)。隣の研究室の、うんちく豊富な講師の先生は自然史博物館で研究員をやっていた方。他には、アメリカでフィギュア選手(!)だった院生や、私の先輩のように勤務の合間にパートタイムで院生をやっている人とか…ほんといろいろ。出身地も、イギリス含めたヨーロッパ諸国はもちろん、北米やシンガポール、そして中国からと様々。こっちの学生にとっては“海外に進学する”というのがごく普通の選択肢だという(つまり「留学」という概念がない)ことは、凄く新鮮な発見だった。

そんなわけで、いろんな人といろんな話ができる環境だったのだけど…残念なのはそれを十分活かせなかったこと。やっぱり、言葉の壁が大きかったね…アカデミックな話ならまだ大丈夫なんだけれど、ネイティブの日常会話になるとついていくのも大変。あと、どうしてもスポーツをメインに扱っている研究室ということで、みんなスポーツ好きなわけで、そんな話の中にスポーツ嫌いの私が飛び込んで話をするってのがなかなか厳しかったというところも。

そんなわけで、教授はおろか、指導してくれるポスドクの方ともコミュニケーション不足になってしまった。結果として無用の不信や猜疑心が生まれ、狡猾な策略や意味不明な欺瞞を引き起こし、ちょっと関係がぎくしゃくしてしまった(冒頭で「気持ちが晴れない」って書いたのはこのため)。そこはちょっと、お互いにとって不幸なことだったね。ダメだね…もっと外国語を実践的に学ぶべきなのはもちろん、自分を積極的に表現していくスキルも身につける必要があるんだと思う。ダンススクールを見学したときに、これは私に限らず、日本人の多くが抱えている問題なんだと思った。じゃあ、具体的にどうしたら?って言われると正直分からんのだけど…これは日本人への宿題っていうことになるのかな。

でも、それを差し引いても、今回の研究生活は充実していた。なにより、人生で初めて研究内容に面白さを感じ、やりがいを見出せたことはとてもいい経験だったと思う。こんなクズ人間でも、適切なテーマに出会って、刺激的な環境にさえ曝されれば、なんとかやっていけるんだなぁと。そうやって自己肯定感を得られたという意味でも、まぁ多かれ少なかれ「留学」したメリットというのはあったのだろう。

水木金月…残り4日間。少しでも学生の本分を果たせるように、少しでも研究室に貢献できるように、精一杯やっていこう。

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イギリスではロールモデルは見つからなかった

リンカーンシャー、グランサム。アイザック・ニュートンの育った街、そしてマーガレット・サッチャーの故郷。ずっと気になっていたこの街に行ってきた。

東海岸線で通り過ぎるたび、駅の雰囲気は悪くないなと思っていた。けど、いざ駅を降りて歩き出すと、街の入り口にどーんと立つスーパー、モリソンズ…思わず「む」と立ち止まってしまった。

知ってるかもしれないけれど、イギリスにはスーパーにも「格」というか、ランク付けのようなものがある(ていうか日本にもあるよね)

Waitrose
上級、デパ地下クラス。生鮮品と日用品が主かな(衣料品とかはあまり見ない)。日本で言ったら…『ザ・ガーデン』みたいな?(縁がないのでよく知りません)
Marks & Spencer (M&S)
中の上、衣料品なども扱う大型小売店。それなりのものを、それなりの値段で。このへんまでは店員の対応も日本と同じ水準といっていい。ヨーカドーとかサティとかに当たると思う。
Sainsbury’s
中の中。日頃一番よく使ってる。都内で言うとサミット?(都内に住んでないんでよく知ry
Tesco
中の下、おそらく店舗数はダントツの大型チェーン。よく使ってたんだけど、近頃ニュースを見てるとキナ臭い話ばかり目につくので、あまり行かなくなった…
Morrisons
ロンドンだと郊外にある。値段は安いけど少し下の方らしい。ここから先は行ったことがない。
ASDA, Lidl, Somerfield,…
ロンドン中心地にはない。郊外に大型店として出店。雰囲気は…お察しください(行ったことないけど)

スーパーで街の「品定め」をするのはいいことだと思わないけれど、でも少なからず街の実態を反映しているのも事実。例えば、ウィンザー(女王陛下のお膝元)にはとても大きなウェイトローズがあった。カンタベリーみたいに小さくても歴史のある街なら、商店街(High Street)にはM&Sがあることが多い。ハマースミスのような、そこそこの住宅地にはセインズベリーやテスコの大型店が建っていたりする。

一方、ロンドン近郊でアスダやリドルがある地区に入ってしまったら、気をつけなくてはならない。というのは、治安の悪い地域にこうした大規模店を建てて、強引に治安を良くしようとする都市計画がなされていることも少なくないから。

というのが、モリソンが一等地に建っているのを見て(あー失敗したか…?)と思った理由。でも、せっかくなので街中をぶらぶら。「見たいものばかり見えてしまった」という部分もあると思うのだけど、やっぱり素敵な感じはしない街だった。住宅街はお世辞にも綺麗という感じではないし、やたらタトゥー屋さんが多い。市役所の方や資料館のおじさまは親切だったけど、「何年か前に美術館は閉めちゃったんだよ」っていう話からも、グランサム市全体としてさほど豊かではないことがうかがわれる。

そして街中に入っていったら…果たしてあったよ、リドルとアスダ。サッチャーの生家のすぐそばに。

ニュートンの時代にこの街がどうだったかは分からないけれど、少なくともサッチャーの育った時代なら想像をたくましくすることができる。以前は大きな企業もあったみたいだし、スーパーについて言うなら最近までM&Sもあったらしいから、もうちょっと経済には活気があったのかもしれない。でも、他に取り立てるほどのものもない小さな街で、皆が皆を知っているような(ちょっと息苦しい)コミュニティだったところは、おそらく今とさほど変わらなかったはず。

イギリス初の女性警察官を生んだ街であり、父親が地元の名士だった(1946年には市長も務めた)とはいえ、女性だったサッチャーがここで才能を伸ばし、オックスフォードに進んで化学を学び、下院議員となり、保守党党首となり、そして首相になった…というのは、いくら「鉄の女」だったとはいえ大変なことだったろう。いまの、グランサムの街の様子を目の当たりにしたがゆえ、一層そう思う。

イギリスに留学しておきながらあちこち旅行して、自分でも何をしたかったのかと思うことがあるけれど、今思えば“ロールモデル”を探していたんだと思う。でも、ダーウィンやH.V.カーターはお金持ちのぼんぼんだったし、サッチャーやニュートンは名家の生まれ…ジェントルとジェントルマンだけが歴史を紡いできた(そして今も紡ぎ続けている)イギリスでは、私のロールモデルなんて見つかるはずがなかったんだと、ようやく気づいた。

というより、むしろロールモデルを探そうとすること自体が間違いだったのかもしれない。グランサムの街を歩きながらいろいろ考えるうちに、なんというか、自分が自分のロールモデルになるしかないじゃん?という答えに至った。自分は自分の正しいと思う生き方をすればいいんだし、そういう生き方しかできない(個人的なことを言えば、もうアラサーだしね…いまさら生き方を変えるっていうのも正直難しい)。自分の前に線路がなかったら、自分でレールを買ってきて、自力で敷くしかないじゃん?…サッチャーの生まれ故郷を歩いていて、そんな当たり前のことに改めて気がついた。まぁ、キザったく言うなら決意だし、裏を返せば単なる諦念だね。

でも、仮にそう決心できたのだとすれば、往復30ポンドもかけて、たった2時間だけ鄙びた街を歩き回ったことにも、何か意味があったのかもしれない(というかそう思いたい)…とはいえ、特に理由もなく降りることはない街だね。

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バーミンガム日帰り

前回(というか4日前)泊まったケルン・ホテルが、CATSのシアターから徒歩1分という神立地だったので再泊。安い割に意外と小綺麗だし、フロントの感じも悪くない。今回はなんとシングル予約なのにツイン部屋という嬉しいサービス付きだった(バレンタインの当てつけか!とも思ったが…ていうか、こんな性格ブスだから相方いねぇんだな!サーセンwww)

最初は今日の始発で帰ろうと思ったのだけれど、さすがに公演が終わるの22時だし、起きられる自信がなく…だったら今日はエディンバラでゆっくり休んで、明日帰ればいいじゃない?いいよね(こくこくっ)ということで、エディンバラにゆっくり2泊…のはずだった。

ところが、前々からあった理学療法士の先輩の職場を見学する話が、今日じゃないと無理だと発覚。どうも、来週は学校がお休みになってしまうらしい…仕方ないね。

ということで日帰りバーミンガムです。バーミンガムっていったら、ほとんどロンドンのようなものなので片道5時間。往復10時間。せっかくのいい部屋なのに、朝5時起き24時就寝でろくに寝られないというOh my…

という愚痴はさておき…拝見してきたよ、ダンススクール。スタッフも設備も整った、かなりいいエリート学校でした(そして学費も高そう…)

例によってあまり詳しく書けないので申し訳ないんだけど、ティーンの子ども達が親元を離れ、完全寄宿制でトレーニングをしているということで、まぁ診察する方も神経使って大変だ。性別・年齢によっていろいろ考えなきゃいけないし、心配する親御さんの対応もしなきゃいけないし…とりあえず私は(教員にならなくてよかった…)と思いました。今後は、間違っても小児科医にならないように注意しよう。うん。

という冗談はさておき…部外者なのであまり深くは見られなかったというのが正直なところだけれど、それでもよい経験にはなった。そもそもダンスの世界なんて未知の世界なわけで、それに理学療法士の仕事に密着したことだってなかったし(私の大学に限らず、医学部生って他の医療従事者のことをちゃんと知らないんじゃないかと思う)。普通のクリニックに比べたら一人ひとりに時間を割いているほうだとはいえ、それでも限られた時間の中でとても効率よく診ているし、受診する子ども達もよく自分の体の状態と機能を分かっている。正直、私より体の仕組みやコンディショニングのことは分かっていると思うよ。素晴らしいね…

こういう医療を、今後自分ができるのか?と考えると自信がない。今後(仮に)整形外科に進んだとして、スポーツ選手を診るのか、あるいはダンサーを診るのか知りませんが、まずはその分野のことを詳しく知ることが大切だと(まぁ当然のことなのですが)改めて実感した。

ちなみに、今日乗った列車たちは以下の通り:

  • 0536 Edinburgh Waverly – Lancaster
  • 0757 Lancaster – Birmingham New Street
  • 1013 Birmingham New Street – University (Birmingham)
  • 1657 Birmingham New Street – Stafford
  • 1757 Stafford – Crewe
  • 1909 Crewe – Edinburgh Waverly

今更だけど、なんで毎回こんなのを書いているかというと、ブリットレイルパスの“トラベルダイアリー”に転載するため。ブリットレイルパスはどうか分からないけど、ユーレイルパスでは「乗車前に」書かなくてはならないことになっている(まぁチェックする車掌はいないけど)。ちなみに、今回はこれでもらったダイアリーをいっぱいに埋めることができたので、ガッツリ元をとれた気分。

それにしても、今乗っている列車は2222着…帰ったら11時なんだよねぇ。明日の始発乗れるかなぁ(というか切符が列車指定なので、意地でも乗らなきゃいけんのだが)

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WiFi

イギリスの子に「日本はWiFi使えるところがホント少ないよねー」って言われるのが気に入らない。イギリスだってそんなに多くないだろうに…って思う。まぁ、確かにパブとか使えるところはあるけれど、地下鉄はVirgin Mediaと契約してなければ有料だし、特急列車も普通席だと有料だし…ってな感じで、なんだかんだ結構使えない気がする。もっと言っちゃうと、ロンドンだけじゃん…どこでもWiFi飛んでるのって。地方でネット使おうと思ったら、結局マックを探して右往左往しなきゃならなかったもん。

とは言いつつも、ブリットレイルパスで一等席乗り放題の身としては、列車内から無料でWiFiが繋げるのは凄く便利です。東海岸本線(East Coast)のWiFiは、正直これ普通席からわざわざ課金して使ったらブチキレるだろうな…って感じだけど、いま西海岸本線(Virgin Trains)でつないでみたら、すっごいよくつながる。大都市が多いこともあって力を入れているのか、とにかくつながる。つながる→つながる(つまりプラ〇ナバンドとは雲泥の差)。まぁ、それでも北の山間部に入るとすぐつながらなくなるわけだが(ここでも手を抜かれるスコットランド…)

それに比べると、日本では(ロンドン地下鉄みたいに)この通信会社と契約してれば使える、みたいなところが多いかもしれないね。東海道新幹線でやっと始まったサービスでも、特定の通信事業者と契約してなきゃいけないみたいじゃん?こっちの鉄道やパブではそんなことはないので、そこが冒頭の「使えるところが少ない」ってのにつながっているのかもしれない。同じ子に言われたこととして「日本はハイテクの国だと思っていたから意外だった」っていうのもありました。技術立国を(未だに)自負したいのであれば、それに見合っただけのことをしていかないといけないよね…と思います。まぁ、なんていうか…古いんだね、我々は。

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