病院訪問05: 医療法人立病院(北海道)

人気のいわゆる「市中病院」とやら、ここにきて実は初めての訪問です。

気候は済みやすく、立地は環境・交通のいずれも最高。救急は一次から三次までそこそこの数がきているし、当然設備も充実、レクチャなどの学習環境も整っている印象。しかし、どの病院にも研修医のカラーのようなものがあって、それがちょっと合わないんじゃないかな…と思った。もちろんギスギスしているとかそういうではなく、学習意欲が旺盛で、ちょっとトガった感じの人が多いなぁというか。なんか自助努力でも十分伸びていくようなタイプが多く、私のようなダメレジをそこそこの水準まで引き上げる感じではないのかなと(他力本願だなぁ)。あと、大学病院とかと違ってスタッフが有り余っているわけではないこともあり、ちょっと研修制度としてはロバストネスに欠けるのではないかという不安も覚えた(システムよりは、そこに集まってきた個人の素養による部分が大きい?という点では、上と共通する部分がある)

病棟の処置が基本的に看護師さん任せなのも微妙なところだね。見習いのうちは場数を踏むってのも大事なことだから。

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生命科学系研究の入門書

『理系のアナタが知っておきたいラボ生活の中身』読了。理系といっても、対象は生命科学系に限られるのだけど、なかなかいい本なのでは?と思った。

欲張りすぎたがために筆が走っているところもあって、特に実験手技や方法論については、網羅的に紹介しようとしたあまり、かなりの紙面を割いているにもかかわらず記述不足感が否めない(実際に行うには省略されすぎているし、方法の利点欠点といった概観を掴むのにも微妙なところで、帯に短し襷に長しという印象)。けれど、だからこそどういう方法があるのかザーッと流し読むのには向いていると思う。何より方法論や研究論に終始せず、一科学者としての将来の展望や科学に対する考え方、さらには読む価値がある図書の紹介まで書いてあるところは非常にいいと思った。あたかも実際にボスのもとで、時には雑談を交えながら手技を習うところを疑似体験しているような気分になる。おそらくは研究室配属前のように、いままさにバイオ系の研究に飛び込もうとしている、けれど身近に信頼できるメンターがいない、というような学生にはピッタリの本だと思う。

こういうジャンルの本としては、以前から『アット・ザ・ベンチ』が定番になっているけれど、もうさすがに情報が古いと感じる部分もある。特に、この10年間の技術革新は目覚しい部分があって、久々に研究室の先生と話すとウラシマ状態になることが少なくない。そういう意味でも、この本は『アット・ザ・ベンチ』の代わりとはいかないまでも、一緒にあわせて読む価値はある本なのではないかと思った。

アット・ザ・ベンチ―バイオ研究完全指南 アップデート版
キャシー バーカー
メディカルサイエンスインターナショナル

しかし図書館に新書として入ってたから読んでみたんだけど、実はこれでも既に2年前の本なんだよね。しかも当面ラボに用はないってのに、なぜいまさら読んだのやら…

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病院訪問04: 企業立病院(東海)

中京圏の人気企業病院を見学してきた。人気病院ということで、初めて他の見学者と行き会った(偶然にも、1人は以前に見学した大学病院の学生さんだった)

年度末の微妙な時期ではあったけど、巣立っていく研修医の先生方の様子を見る限り「雰囲気は合うかな?」と感じた。けれど、研修医がガツガツやっている感じかと言われると、なんともいえないところがある。救急外来とかはガッツリやってるみたいだけど、病棟はそこまで仕事しなくても回ってしまうのかなという気がした。

企業立病院ということで、一般採用の新入社員の皆さんと新人研修ができる!?というところに魅力を感じていたのだけれど、やっぱり実際にはほとんど交流がない。待遇はいいけれど、おいしいという噂の食堂でオススメメニューを食べたら気持ち悪くなってしまったり、トイレが少なかったりと、気になる点がないわけではない。何より、アクセスが思いのほか不便なのが痛い…鉄道ではアクセス困難で自家用車の購入は必須だろう。休日にちょっと自宅に帰る…というのは、距離の割には大変そう。

最低でも2回、理想的には3回の見学が必要らしいのだけど、ちょっと次回訪問するかどうかは検討中。

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病院訪問03: 大学附属病院(東海)

中京圏の大学病院に行ってきた。

微妙である。スタッフは有り余っているため初期研修医がいなくても病棟が回ってしまう…つまり、その気になれば何もしないまま(最悪、それすら気づかぬまま)研修期間が終わってしまう危険性がある。初期研修で全員市中病院に行っていた卒業生が、後期研修でほぼ全員戻ってくることを考えると、門外漢が後期研修に繋げていけるかどうかにも若干の不安を感じる。集まっている研修医も、どことなく「?」な印象を受けた。

立地は(そりゃ東京に比べると負けるけど)凄くいいし、待遇も悪くないし、先生方やスタッフの方々は好意的だったと思うけど…正直、レジフェアでの「ウェルカム!」な印象とは違うなと感じた。

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自分、バイオ研究者の適正なさすぎて死ぬ。

今週は、STAP細胞で持ち切りの1週間だったね。あまりにインパクトが大きすぎて、「どうせpreliminaryなデータでしょ」などとひねくれたことを思いながら、一歩引いて傍観しようとしていたんだけど、結局論文を読んでしまった…いやぁ。衝撃が強すぎてため息しか出ないね、こりゃ。

iPSに続いてSTAPというインパクトのドデカイ研究が、日の翳るこの国で立て続けに出たというのは、「まだ行ける!」という気にさせてくれるというか、本当にいろんな人の励みになると思う。私もこういう生命科学の発見がしてみたい!と思った方は、keloさんが『STAP細胞に感動した学生は「若手研究者に向けて研究生活とキャリアパス」を読むといいよ』という素敵な記事を書いていらっしゃるので、ぜひお読みください。

…さて、話は変わりまして、仄暗い自分語りをば。

このニュースを見ていて、私は逆に自分がいかに研究者としての適正がないかを、つくづく実感してしまった。小保方先生をみてみると、私のように上から与えられたテーマで「学生としてはイイ!」ということをやろうとか、on/offを分けた中で自分のベストをやろうとか、そういう矮小な人ではない(と私は感じた。根拠は私の偏見と妄想だ)。自分の達成すべき目標が明確で、それに向かって今何を証明していくべきかをしっかり考えている。私のような人間とは違う、「自分が何をなすべきか」を明確に意識しているんだと思う。

今週、実はSTAP細胞以外にもうひとつ、自分の適性不足を実感した出来事があった。それは昨日、年末お世話になった教授の講義を聞いたこと。外科医の先生なのだけど、若い頃から興味のある学会に足を運んで、そこで知り合った仲間たちと一緒に勉強会をしたり、留学して技術を学んだりした…ってそういう昔話。まぁそれだけだったら「なんと意識の高い!」で終わりなのかもしれないけれど、衝撃的だったのが話の視点が「自分史が世界史の中でどう位置づけられるか」とドデカいものだったこと。「自分がこの分野でビッグなことをやってやろう」「自分がこの国を、世界を率いていくんだ」という野望や大志に満ちていた。私にはそういう、「自分が担うんだ」という気概は、ない。心のどこかで「これを知りたいけど、たぶん解明するのは私ではない誰か」と思っている自分がいる。

最近「科学の先端と接触していたい」と題するブログ記事を読んだのだけど、その方が「私の憧れが実は新しいことを自力で発見するという「研究」ではなくて、スパコンを使ってみたい・フラスコで何か反応させてみたいといった「操作」や、最先端で行われていることを「知る」ことである」と書かれていて「あぁ、私もこれに近いな」って思った。ずっと(それこそ8年近く)ひしひしと感じていたことなんだけど、私は別に自分で手を動かして発見したいんじゃなくて、なんかちょっとカッコイイ「サイエンティスト」になりたいとか、先端研究の報告を聞いて自分の中で世界観を掴みたいとか、いわばちょっとプリミティブな情動が背景にある。でも、はっきりいってこれは研究者タイプじゃないんだよ。「研究をするのが好き」というのと、「研究に携わるのが好き」というのは、似て非なるものなんだよね。

STAPのニュースをみてバイオリサーチを志すみなさん、ぜひ自分が何をしたいのかだけは考え続けてくださいね。もしもやりたいことが「自分がビッグな発見をする」という思いと少しズレているのなら、例えば「科学を学びたい」とか「いろんな実験がしたい」という想いが強いのなら、例えばPhDをとってresearcherに…というのはちょっと違う選択肢なのかもしれないから。もっと違う生き方があるのかもしれないから。

…まぁ、とはいえそういう自分もまだ未練を捨てきれずにいるんだが。言ってる傍からSTAPのペーパーを反芻しちゃって、そういえば山中先生も偉大だなー、iPSとSTAPどっちが勝つかなーなんて思い出して山中先生のスピーチ動画見始めちゃったりしている始末で。自分のやってる領域の基礎的なことも分かっていないのに「とりあえずケンキュウがしたいれす!」みたいな厨二病のまま10年間もやってきちゃって、3ヶ所も研究室を替えて未だに論文も書いたことなくって「どうするの?明らかに予後不良だけど死ぬの?」みたいなことを自問自答してばかりの毎日だけれど、まぁもうちょっと足掻いてみようかなとは思っていたり。

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